現代の子どもが抱える心の問題〜静かな学級崩壊〜

現代の子どもが抱える心の問題〜静かな学級崩壊〜

磐田市中泉で学童保育型学習塾プルートを運営している塾長の藤田です。

日本の教育現場に長く携わってきた中で、子どもたちが抱える問題の変化を感じています。一昔前、学校現場の大きな課題といえば、「校内暴力」や「学級崩壊」でした。「学級崩壊」問題は今でも教員の抱える悩みの一つですが、みなさんにとってそのイメージは、暴れる子どもたち、大声で授業を妨害する様子など、学校の秩序が乱されるものではないでしょうか。

ところが、近年、学級崩壊の形は少し異なる方向へ変わりつつあります。「静かな学級崩壊」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。これは、子どもたちが秩序を乱すのではなく、むしろ無気力や無関心によって、学級の活力そのものが停滞してしまう現象を指します。子どもたちの心が外からは見えにくい形で閉じてしまい、社会とのつながりや学びへの意欲が失われていくのです。

この「静かな学級崩壊」は、不登校児童の増加とも深く関連していると言われています。実際、近年では全国的に不登校が急増しており、子どもたちの心理的な無気力は、家庭や社会、学校の大きな課題となっています。(2024年10月に公開された文部科学省の情報では、小中学校の不登校児童生徒数が過去最多の34万6482人に達し、5年間で約2倍に増加しました)

 

無気力の背景にある家庭環境の変化

子どもたちの無気力は、彼らを取り巻く環境が大きく影響していると考えられます。かつては「家庭内暴力」が問題視されていた時代がありましたが、最近では「無関心」や「ネグレクト(育児放棄)」が増加しているのが現状です。これは、家庭の中での親子のつながりが薄れつつあることを示しているのではないでしょうか。

さらに、子どもを育てる保護者自身が精神的な悩みを抱えるケースも増えています。特に、うつ病や過労などの影響で、親が子どもと向き合う余裕を失ってしまうことも少なくありません。このような環境が、子どもたちの無気力を助長しているのではないかと考えられます。

 

学習性無力感とは?

無気力の原因としてよく挙げられるのが「学習性無力感」という心理現象です。これは、心理学者のマーティン・セリグマンによる研究で知られています。セリグマンの実験では、電流を避けられない状況に置かれた犬が、後に電流を避けられる環境になっても、何も行動を起こさずに電流を受け続けるようになったことが確認されました。この現象は、「自分はどうせ何をしても状況を変えられない」という思い込みによって、自発的な行動を起こさなくなる状態を指します。

この学習性無力感は、人間の日常生活でもよく見られます。例えば次のようなケースです:

  • 学業:授業が難しく、テストで何度も失敗すると、「どうせ自分には無理だ」と感じて勉強を投げ出してしまう。
  • 仕事:どんなに頑張っても上司に認められず、「努力しても意味がない」と思い仕事への意欲を失う。
  • スポーツ:部活動で周囲との差を感じ、「いくら頑張っても勝てない」と努力をやめてしまう。

こうした無力感は、子どもたちの日々の行動にも大きな影響を及ぼします。

 

無力感を克服するための親の役割

学習性無力感を克服するためには、子どもたちが「自分はやればできる」と感じられる体験を積むことが必要です。そのためには、次のようなポイントを意識することが大切です。

  1. 達成可能な目標を設定する

無理に高い目標を設定するのではなく、子どもが「少し頑張れば達成できる」ような小さな目標を一緒に考えてみましょう。

  1. 努力を評価する

子どもが目標を達成できたかどうかだけではなく、その目標に向けて努力した過程をきちんと認め、称賛してあげることが重要です。

こうした積み重ねによって、子どもたちは「自分には価値がある」「自分ならできる」という自己有用感を育み、前向きな行動を取れるようになります。

 

まとめ

「静かな学級崩壊」や子どもたちの無気力の背景には、家庭や社会の変化、そして学習性無力感が関わっています。しかし、適切な目標設定や努力を認める親の関わりによって、子どもたちが再び意欲を取り戻すことは十分に可能です。次回の記事では、子どもたちの「感情」と向き合う具体的な方法について考えていきたいと思います。